2025/04/12 11:34
Producer's Story
佐藤食品株式会社
▸お話をお伺いした、佐藤食品株式会社 4代目社長 佐藤 賢一さん

【4代目として家業を引き継ぐ】
「秋田イイモノの事業を立ち上げたら、いつか扱いたい!」筆者が以前からそう思っていたのが"佐藤食品(カクチョウ)さんの佃煮"でした。
幼いころから秋田市にいる祖母のもとへ遊びに行くと、いつも食卓に出ていた佃煮。秋田の佃煮の特徴でもある、甘めの味付けが子どもの頃の自分にとっても食べやすく、昔からの大好物です。そんな佃煮をぜひお取扱いさせていただきたいと佐藤社長にお伝えしたところ、快く引き受けていただきました。
1932年に秋田県潟上市で創業し、今年で93周年を迎える老舗の佃煮店 佐藤食品株式会社。
現在4代目社長を務める佐藤 賢一さんは、県外の大学を卒業後に石川県の佃食品㈱さんにて修行を積まれ、2008年より家業である佐藤食品㈱に入社されました。
入社後は佃煮の加工現場から一通りの業務を経験されたそうですが、当時は製造量の記録などもなく、一人一人が個人商店のように製造している様子に驚いたそうです。
そして工場長、専務とご経験を経て、2018年に4代目社長として代表取締役に就任されました。前の職場での作る上での基準と、現在の基準の両方の物差しを持って経営していけることが強みだと、佐藤社長は言います。
▸佃煮の製造風景


【時代に沿った加工の工夫】
八郎潟でのワカサギや白魚などをはじめとした小魚の漁獲量は、豊漁不漁の波があるそうです。
佃煮屋さんは不漁の時に備えて多めに原材料をストックしておくそうなのですが、コウナゴなどの小魚は近年ずっと不漁が続いています。
これは秋田県内に限ったことではなく、全国的な現象とのこと。
ですので、限りある資源の中で今つくれる商品の価値を向上していくことに取り組まれています。
「昭和7年から続く佐藤食品さんの中で、味付けはどのように受け継がれているのか?」
という質問をさせていただいたところ、意外な答えが返ってきました。
味付けは時代に合わせて、全く同じものをつくり続けるのではなく、色々変えることをずっとやっているそうです。
二代目社長の頃から、お客様にどうやわらかく、おいしく食べていただくかを常に工夫しながら作り続けてきたのが佐藤食品さんの歴史。
(やわらかさを追求しすぎると、カビが生えてしまうなどの品質に影響が出てきてしまう)
昔は白米に、ものすごくしょっぱい「ぼだっこ(塩サケ)」をのせて食べていたような食文化でしたが、現在は減塩などのニーズが高まっている時代です。
時代の食文化に合わせて、美味しく佃煮を食べていただくための工夫は欠かせないのです。
また、味付けだけではなく見た目の工夫も行っています。
例えば、今回私たちの方でお取扱いさせていただくことになった、【つくだにあそび】という詰め合わせの商品。
パッケージデザインを工夫し、佃煮になじみのない方にも受け入れていただけるような丸みを帯びた容器に仕上げられています。
2020年に開発された【ナッツみかん】は、みかんのスライスと佃煮を合わせた商品。見た目の華やかさ、そして爽やかな柑橘の香りと甘い佃煮のバランスの良さが素晴らしく、若い方にも人気なのだそうです。
社員のアイディアが起点となり、お客様が開けたときに感情が動くように、という想いを込めて商品化されました。
"各家庭において、食文化はそれぞれ。
例として漬物を挙げてみると、漬物が出る家庭と、出ない家庭があります。
あまり漬物を食べない家庭であればスーパーでも漬物売り場に足を運ぶことは少ないでしょう。
でも、それはそれで正しいこと。
たくさんの選択肢がある今の時代において、他の商品に負けないような商品の提案を行っていく。"
という佐藤社長の言葉が印象的でした。
▸贈答品にもピッタリな「つくだにあそび」

【佐藤食品の佃煮づくり】
佐藤食品さんの中でも大人気商品である「ワカサギ唐揚げ」。
二度揚げ製法が特徴的なこちらの商品ですが、潟上市周辺でも食べられ始めたのは戦後からなのだそうです。
青森県で「進藤水産」さんがいち早くワカサギ唐揚げの商品化を行い、秋田県では「菅英佃煮本舗」さんが先行して商品化に取り組んだと聞いています。
ある程度の認知度が出てきた段階で、県内他の佃煮屋さんも商品化・販売を始めた歴史があるそうです。
様々な場所で販売するにあたり、美味しさを長持ちさせるための工夫が二度揚げの製法だったのです。
わかさぎを水揚げされたときに一度に製品にすると、加工できる量が限られるため、天ぷらくらいの状態まで揚げます。
一次加工したものを冷凍し、その後お客様にお出しする前に二度揚げすることによって、食卓でのカリカリ感が生まれているのだそうです。
これには、佐藤食品さんの特徴でもある生炊き製法が応用されています。
(高い鮮度の状態をキープし、通年でたくさんの佃煮を販売できるようにするために、収穫してすぐの状態の小魚を生の状態で一気に炊き上げる製法が「生炊き製法」)
また、「甘めの味付け」も佐藤食品さんの佃煮の特徴です。
東京の江戸前の佃煮は茶色っぽくてしょっぱいものが多く、お茶漬けなどにして食べることが多いそうですが、甘めの味付けが受け入れられやすい秋田の食文化の中で、今の味付けが受け継がれてきました。
秋田の佃煮屋さんの中でも、特に甘さが強いのだそうで、筆者が子どものころから食べ慣れていたのにも納得がいきました。
ちなみに、秋田の佃煮はそれだけで味が完成しているので、お茶請け(お茶と一緒に出されるおつまみ)として食べられるのが多いそう。
少し変わった食べ方だと、チーズと一緒に食べるのも、魚のくさみがより一層隠れてくれてオススメなんだそうですよ。
▸きれいに並べられた佃煮

【突然の火事を乗り越えて】
2024年3月13日の深夜、佐藤食品さんの隣接する家屋で火災が発生しました。
「大変だ。隣の家が燃えてる!」
という三代目社長からの電話で深夜に飛び起きた佐藤社長は、店舗に急いで向かうとすでに火柱が立っている状態。
間一髪、事務所からパソコンや重要な書類などを運び出したものの、店舗と事務所、パックセンターが全焼してしまいました。
幸いなことに、風向きの影響で工場には火が燃え移らなかったそうですが、もし工場が燃えてしまっていたら事業を継続することは難しかったかもしれないそうです。
火事のさなか、深夜4時に駆けつけてくれた社員が泣いている姿を見て、佐藤社長はすぐに気持ちを切り替えて再建していくことを心に決めました。
翌朝、鎮火して煙がくすぶっている中で社員を集めて朝礼を行い、
「雇用については守る。復帰に向けて頑張ろう。」
と言う声掛けを行い、短期的な目標を作って整理しながら復旧を進め、なんと火災から1週間で商品出荷を再開することができたそうです。
復旧を進める中、2024年11月に旧北都銀行 昭和支店の建物へ店舗を移転することが決定。
パックセンターが見える形の店舗と事務所が誕生しました。
さらに、今後はカフェも併設するということで着々と準備を進められていました。
火災から約1年ほどでここまで再建されたスピード感は、社長と社員のみなさん、そして地域で関わっている人々の想いが表れているのだと思いました。
カフェのオープンに伴い、新たな新商品の開発にも着手されているそうで、これからの発展がとても楽しみです。
▸新店舗の様子

【地域の100年フードとして秋田名物へ】
秋田の佃煮は、2024年に地域の「100年フード」に登録されました。
100年フードとは、日本の多様な食文化の継承・振興への機運を醸成するため、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を、100年続く食文化「100年フード」と名付け、文化庁とともに継承していくことを目指す取り組みのこと。
これを仕掛けたのは佐藤社長。
いかの佃煮に甘納豆(手亡豆)が加えられた「いかあられ」は秋田県で生まれた特徴的な商品。
前述した「ワカサギ唐揚げ」や「生炊き製法」なども秋田の佃煮ならではの食文化です。
ここ数年の原材料不足や後継者問題などで苦戦している佃煮屋が多い中で、
今まで以上に秋田名物としての"佃煮"をPRしていきたいという想いから、100年フード登録の取り組みを進めたそうです。
今後は秋田の隠れB級グルメとして、ケンミンショーに取り上げられることを目標としているとのこと。
きりたんぽ、いぶりがっこ、稲庭うどんに次ぐ秋田名物として、佃煮がもっともっと有名になっていく未来が楽しみです。
▸秋田の佃煮「いかあられ」

佐藤食品株式会社の商品はコチラから↓
■【ふるさとからの、おすそ分け。】つくだにあそび selected by akita iimono[佃煮6種詰め合わせ]
【佐藤食品株式会社】
代表取締役:佐藤 賢一
本店・事務所・パックセンター:秋田県潟上市昭和大久保字街道下68
本社工場:秋田県潟上市昭和大久保字片田千刈田26
(文責:奥颯人)